
- 作者: モートン・ハンセン
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2019/01/18
- メディア: Kindle版
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『GREAT @ WORK 効率を超える力』を読み終えたので、簡単に感想とか印象に残ったところをまとめてみます。ちなみに原著は、"Great at Work: How Top Performers Do Less, Work Better, and Achieve More" というタイトルです。
本の目次
- プロローグ 「“どんな努力”にも必ずリターンがある時代」の終焉
- 1 「すること」を減らし、そこに徹底する
- 2 今そこにある仕事を「再設計」する
- 3 「成長のサイクル」を巧みに回す
- 4 「情熱(PASSION) × 目的(PURPOSE)」を強力なエンジンにする
- 5 「しなやかな説得力」で勝ち抜く
- 6 解決を明日に持ち越さない
- 7 1個のプロジェクトに全力投球する
- 8 「スマートな働き方」から広がるプラス効果
- エピローグ 「トップ・パフォーマー」として走り続けるために
本の概要
筆者が若い頃にコンサル会社に勤めていたエピソードから話は始まります。筆者はとにかくハードワークすることで業績を上げようとしますが、あるナタリーという同僚が自分より仕事ができるのに残業も休日出勤もしないという事実に驚きます。筆者はこれを「ナタリー問題」と名付けます。
筆者は『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』の共著者であり、その本では企業を対象に優れた業績を説明しましたが、ナタリー問題の経験から今度は個人に焦点を当てて優れた業績を分析しました。
数年の研究の結果、筆者の研究チームは以下の 7 つの習慣で優れた業績の大部分を説明できると結論づけました。(7 つの習慣というと別の本が思い浮かびますが、この本の中では下の 7 つの習慣の意味で使われます)
- 優先すべきことをいくつかに厳選し、そうして選んだ分野に大きな努力を注ぐ(業務範囲の重点化)
- あらかじめ定められたゴールに到達するだけでなく、新たな価値を生み出すことに重点を置く(仕事の再設計)
- 機械的な反復練習を避け、技能を伸ばす練習を行う(質の高い学習サイクル)
- 自分の情熱を強い目的意識と一致させられる役割を探し求める(内的動機づけ)
- 他社の支援を得るために心理戦術をうまく使う(しなやかな主張)
- 無駄な会議を減らし、参加する会議では白熱した議論が必ず起こるようにする(厳密だが、オープンなチームワーク)
- 部署横断プロジェクトに参加する場合は、どれに参加するかを注意深く選び、生産性の低いプロジェクトは、はっきりと断る(ほどよい協働)
この 7 つの習慣に対して具体的な事例を交えつつ詳細を解説し、旧来のとにかく一生懸命働くことが成功につながるという考えから、やることを絞って賢く働くことが優れた業績につながり、さらには充実した人生も送れると説明します。
印象に残ったところ
することを減らして、こだわる
この本の中で 1 つめに紹介される習慣で、一番重要とされているのがこの部分です。他の習慣の中でも本当に重要なことに絞り込むことの重要性は繰り返し出てきます。さらに、することを減らすだけではまだ半分で、それについて徹底的にこだわることが重要と書かれています。
自分もついついいろいろなことに手を出してしまいがちですが、実感としてひとつひとつへ使える時間が減りますし、マルチタスクが増えるのは効率面でも悪影響なので、もっとやることを絞っていかないといけないと感じました。
労働時間と業績
旧来の労働時間が増えると業績が上がるという考えですが、この本によるとそれは必ずしも間違いではないとのことです。しかし、それには限界があり、週 50 時間ぐらいまではかけた時間の分だけ上がるものの、それ以降は労働時間を増やすメリットが少なくなり、週 65 時間を超えるとむしろ落ち始めるようです。
一万時間の法則と成長サイクル
一万時間を費やせばその分野でプロフェッショナルになれるという法則はよく聞きますが、この本では単純に時間を費やせばいいというのは誤りで、短期間でフィードバックを受け取り改善していくというのを繰り返して行う成長サイクルが重要だと説明しています。
一方で、仕事で正確なフィードバックを得るというのはなかなか難しい面もあります。自分の行動を記録したり第三者に観察してもらって、小さな改善でも一つ一つ行っていくのが大事なのかと思います。
難しい問題に取り組めば、学習の機会がふんだんに得られる
本の中のエピソードとして、難しい患者を断った医師たちと難しい患者を受け入れた医師たちでは、短期間では簡単な患者だけを治療したグループの成功率が高かったものの、長期的には難しい患者を受け入れたグループのほうが成功率が高くなったという話が出てきます。
難しい問題に取り組むことは短期的に成果が出ない可能性がもありますが、一方で新しい学びを得る機会も多いのでやっていきの精神はやはり大事ですね。しかし、いきなり大きなリスクをとらなくてもいいように、まずは小規模で始めるとかリスクを小さく実験していく工夫が重要そうです。
満足化
人は「これで十分」と満足してしまうと成長が止まってしまいます。これを満足化というようです。
「完全に理解した」と思ってると気づいたら「なにもわからない」状態になってるのはよくあることなので、ある程度のところに達してもまだ理解できてないことがたくさんあるという視点は常に持ちたいです。
合理的思考に訴えるだけでなく感情に訴える
周囲の協力を得るためには、論理的に正しさを訴えるだけではダメで、感情面でも訴えることが重要なようです。自分はこれまで合理性での説明ばかりしていたので、これが一番刺さりました。
感情に訴えるためには、現状に対してネガティブなイメージを引き起こし、未来に対してポジティブなイメージを呼び起こすことが重要と書かれています。そのためには、言葉だけでなく視覚的なイメージなど五感に訴えることが重要と説明されています。とはいっても、それを現実の問題に対して適用するのが難しいのだとは思いますが。
反対意見を和らげる
周囲を説得するためには、反対する人の視点でものを考えたり、譲歩できるところは譲ったり、いっそ味方として招き入れるのが重要と書かれています。当たり前といえば当たり前ですが、実際には自分の意見を通すことに精一杯になりがちなので、常に相手側の視点を持てるように気をつけたいです。
多様性
多様性は新たな情報と視点をうながし、よりよい意思決定と問題解決につながるということが書かれています。
最近では多様性の重要さはいろいろなところで主張されていますが、一方で普段意見の近い人同士でコミュニケーションしがちです。確証バイアスによって自分の聞きたい情報だけを無意識的に求めてしまうことも起こりがちです。
自分とは違う分野に興味を持つ人と関わる機会を増やしたり、あえて自分の反対のスタンスでものごとを考えてみるといったことを普段からしていきたいです。
賢い協働
なんでもかんでも協力することは大事と言われがちですが、この本では協働は通常よりも大変になりがちなので本当に価値がある場合以外は断ることが重要としています。最初のすることを減らすにつながるところがありますね。
感想
組織よりも個人に絞ってどういう習慣が優れた業績につながるのかというテーマはおもしろかったです。筆者は 7 つの習慣をできるだけ読者が取り入れやすいようなアプローチで書いてくれているので、実際に自分の中に取り入れられそうな習慣も見つかるのではと思います。
一方で、具体的に自分の仕事の中でこれをどう活かせばいいのか難しいと感じる部分もいくつかありました。こればかりは個人によるところが大きいのでしょうがないところではあります。
最近よく言われる「働き方改革」というのが具体的になんなのかはよくわからないですが、ある意味ではこの本の内容は個人レベルでの「働き方改革」なのかと思います。